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連載・特集

緑地帯 ちひろとヒロシマ 竹迫祐子 <4>

 国際的に知られる写真家の石内都といわさきちひろのヒロシマに関する作品を並べた「Life展 ひろしま 石内都」を、長野県の安曇野ちひろ美術館で7月16日まで開催している。

 石内は、原爆資料館(広島市中区)に所蔵されている約2万点に及ぶ被爆資料から、実際に肌に着けられていた遺品を中心に選んでライティングボックスに載せ、近年は自然光の下で撮影している。焼かれ、裂け、黒ずんだ染みを残しながらも、かろうじて原形をとどめた花柄ワンピースもあれば、さほど傷のないブラウスもある。服を透かした光が、あの日、身に着けていた人を貫き、街を焼き尽くした閃光(せんこう)を思わせる。

 「原爆の死という集団としての死ではなく、たった一人の女の子の死について考えたい」と語る石内の写真には、あの瞬間まで笑い、怒り、願い、考え、未来を夢見ていた「その人」がいる。

 「私の役割は、どんなにかわいい子どもたちがその場におかれていたかを伝えることです」と、ちひろはヒロシマがテーマの絵本「わたしがちいさかったときに」を描く覚悟を固めた。そうして描かれたちひろの絵を、石内は弱々しいと感じ、ちひろの逡巡(しゅんじゅん)、悩みや苦しみを感じ取ったという。

 「ちひろさんも私も、ヒロシマに関してはよそ者」と石内は語る。作品に一切説明を付けない石内。見る人の想像に委ね、大胆な省力で描いたちひろ。よそ者2人が捉えた生の営みや輝きは、見る者にとって理を超えて、原子爆弾の非人道的な残虐性を照射する。(ちひろ美術館主席学芸員=長野県)

(2018年5月25日朝刊掲載)

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