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連載・特集

緑地帯 ウルシュラ・スティチェック・ボイェデ ポーランドとヤポーニャ <1>

 欧州の中央部にある国、ポーランドと日本(ポーランド語でヤポーニャ)との絆は1世紀以上前にさかのぼる。ポーランドは18世紀末に隣国のロシア、オーストリア、ドイツによって分割され、123年間地図から消えてしまった。やっと1918年に独立国家に戻り、翌年に日本と国交を樹立した。今年は、その100周年の記念の年である。欧州随一の親日国といわれるポーランドと日本で、数多くの記念行事が行われている。

 ポーランド人である私は91年に広島大へ留学した。その2年前、ポーランドは改めて民主主義の道を歩み始めたところだった。ソ連からの自由を求め、社会運動を起こした独立自主管理労働組合「連帯」の創設者レフ・ヴァウエンサ(ワレサ)は「二番目の日本をつくろう」と呼びかけていた。それを聞き、私はワルシャワ大の日本学科に入学した。

 その時初めて栗原貞子、原民喜、井伏鱒二などの「原爆文学」作家を研究した。当時、ポーランドでほとんど知られていなかったその文学を、やはり現地の広島で勉強した方が良いと考えた。ワルシャワ大の日本語の講師であった広島大の水島裕雅名誉教授の協力をいただき、広島に来ることができた。

 修士論文では原民喜の戦前の作品を分析して、戦前の日本における「人間存在の不安」について書いた。広島に住んでいるポーランド人である私には、文学研究を通じて両国の懸け橋となる大事な義務があると考えた。(日本文学研究者=広島市)

(2019年11月27日朝刊掲載)

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