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連載・特集

緑地帯 ウルシュラ・スティチェック・ボイェデ ポーランドとヤポーニャ <6>

 広島県に住んでいるポーランド人の数は多くない。長期の滞在者はおよそ15人である。全国の千人以上に比べると大した数ではないが、私たちは強いコミュニティーを形成している。ほとんどのポーランド人はカトリック信者なので、よくカトリック幟町教会(広島市中区)に集まり、親交を温める。

 広島市映像文化ライブラリー(中区)では近年、ポーランド文化をより深く理解するための、とてもうれしい企画が行われている。「ポーランド映画祭」である。ポーランドのさまざまな時代を代表する映画が見られる。母国から離れた私たちにとって、大変ありがたい映画祭である。

 実は、私は毎年、ある立派な方とこの映画祭に足を運ぶ。数年前に知り合った被爆者の西岡誠吾氏だ。西岡氏は1960年代に技術者として何度もポーランドを訪れた。第3の都市ウゥチ(ウッジ)で知り合った家族と文通を続けていたが、ある時から連絡が取れなくなった。私は現地の友達にその家族の行方を捜してもらった。幸運にも居場所が見つかり、西岡氏は約40年ぶりに文通ができるようになった。映画や文通、それに私とのポーランド語での会話を通し、若い頃のポーランドでの思い出がよみがえったという。

 千葉県出身の故梅田芳穂氏は60年代からポーランドに住み、現地の大学を卒業。80年代に労働組合「連帯」に参加し、21世紀はじめには日本とポーランドの電力会社の交流に力を入れた。ポーランドに住んでいた日本人、広島に住んでいるポーランド人、それぞれに多様な事情がある。(日本文学研究者=広島市)

(2019年12月4日朝刊掲載)

緑地帯 ウルシュラ・スティチェック・ボイェデ ポーランドとヤポーニャ <1>

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