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緑地帯 ウルシュラ・スティチェック・ボイェデ ポーランドとヤポーニャ <2>

 ポーランドと日本、両国にはいくつかの共通点がある。その一つは第2次世界大戦中の最も残酷な悲劇、つまりポーランドにおける多くの強制収容所の存在と、広島・長崎の原爆投下のことである。

 広島で勉強してきた私には、両国の懸け橋になる義務があると思った。それを果たすため、修士論文で原民喜の作品を分析した「人間存在の不安」のテーマを、博士論文ではポーランドの文学ジャンルである「アウシュビッツ収容所文学」まで広げた。ヒロシマとアウシュビッツ、双方の文学作品に描かれた残酷な行動を読み解きながら、「人間存在の不安」について論じた。

 現在はこの研究を少し違う方向へ広げて、中村朋子氏と共に世界中のさまざまな言語で書かれた「原爆文学」の調査をしている。「LinguaHiroshima」とインターネットで検索すれば、私たちの研究結果を調べることができる。特に、どのような「原爆文学」がポーランド語へ翻訳されたか、あるいはポーランド人が書いたアウシュビッツについての作品がどのくらい日本語へ翻訳されているかに関心を向けた。

 アウシュビッツ収容所文学の日本語翻訳作品で最も有名なのは、ゾフィア・ポスムイシの長編小説「パサジェルカ<女船客>」(恒文社、1966年)である。ほかにタデウシ・ボロフスキの短編小説「皆さま、ガス室へどうぞ」(「ポーランド文学の贈りもの」恒文社、90年)、ゾフィア・ナウコフスカの短編集「メダリオン」(松籟社、2015年)などが挙げられる。(日本文学研究者=広島市)

(2019年11月28日朝刊掲載)

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