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連載・特集

緑地帯 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺のこす <1>

 7月末から10日間ほど、広島市中区のハチドリ舎で写真集展「Hiroshima Graph」を開催した。

 写真展ではなく写真集展。私は2014年から手製本による写真集制作を始め、これまで4冊を発表してきた。ハチドリ舎では、竹原市の大久野島の毒ガス製造の歴史をテーマとした写真集と、私の祖母の被爆体験をテーマにした写真集を展示した。いずれも、15年に故郷の広島に拠点を移してから制作した「Hiroshima Graph」シリーズの作品だ。

 完成した本だけでなく、どのような工程を経たのか試行錯誤がわかるよう、全てのダミーブック(試作本)も展示した。そして会場で私が製本の実演をすることで、写真集制作の全てを来場者に体感してもらおうという試みだ。

 今回の展示で面白かったのは、来場者の年齢層によって興味の対象が違ったことだ。

 若い人からは、主題や物語をどうやって本に落とし込むのか、紙や素材、編集など手作りの写真集について次々と質問いただき興味津々なのが伝わってきた。

 年配の方々は、作品の内容に関心を持たれた方が多かった。私が作品説明で祖母の被爆の話をすると、ご自身や親族の被爆体験をお話になり、そこに居合わせた人も話し始め…と世代を超えて自然と会話が生まれる場となっていた。

 私の写真展を通じて人が出会い、戦争について語り合うきっかけとなったことが最大の収穫だ。  展示した2冊の写真集は、ハチドリ舎でいつでも読むことができる。どうか多くの人に手にとって、読んで、感じてほしい。(ふじい・よしかつ 写真家=広島市)

(2021年10月21日朝刊掲載)

『緑地帯』 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺す <2>

緑地帯 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺す <3>

緑地帯 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺す <4>

緑地帯 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺す <5>

緑地帯 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺す <6>

緑地帯 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺す <7>

緑地帯 藤井ヨシカツ 手製写真集で記憶を遺す <8>

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