×

連載・特集

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <1> 東欧の国をご存じですか?

美味ワイン 世界に輸出

 広島市佐伯区出身の片山芳宏氏(62)が今春、東欧のモルドバ共和国の大使に就任した。各国の大使館、総領事館で活躍してきた経験を基に、古里のとりわけ若者たちに外交の仕事の魅力、重要性を伝える。

    ◇

 今年2月、モルドバ共和国の大使に着任しました。モルドバは、ウクライナとルーマニアに挟まれる東欧の内陸部に位置します。

 国土の大半は小高い丘と森林が続く丘陵地帯です。広さは九州ほど。そこに約270万人が暮らしています。国民の7割以上をルーマニア系の人々が占め、他にウクライナ系やロシア系、さらには南部地域のトルコ系などの人々も住んでいます。

 国語はルーマニア語ですが、第2次大戦後に旧ソ連を構成する一地域となったこともあり、ロシア語も広く話されます。明るく親切な国民性です。

 特筆すべきはワイン造りです。5千年以上前から始められ、古代からずっと欧州の王侯貴族たちにも親しまれて来たとも言われています。

 国内総生産(GDP)の3%前後を占める大事な産業で、生産量の約90%が日本を含めた外国に輸出されています。ちなみに、首都キシナウの郊外に位置する「ミレシュティ・ミチ」ワインセラーは全長約200キロに及ぶ地下貯蔵庫です。ギネスブックにも世界最長のワインセラーと認定されています。

 広大な地下を車で回るツアーには私も参加し、その巨大さに圧倒されました。ツアーの最後に待っていたのは、大理石に囲まれた応接室でのワインの試飲。サラミやチーズなどとともに、いくつものおいしいワインを堪能して再び圧倒され、幸せな気持ちになりました。

 さて、大使としての私の仕事は、様々な分野で日本とモルドバとの交流が広がっていくためのお手伝いをすることです。

 モルドバの人たちは、これまでに日本政府が供与してきた農業や医療分野などでの経済援助を高く評価しています。今後は通商や投資分野、あるいは観光、文化交流なども双方向で拡大していくよう、尽力していく所存です。

 日本からの支援に感謝し、日本文化に関心を持つ純朴で心温かい人々が、ここモルドバに居ます。そして、どのボトルを飲んでも、ワインは最高に美味です。次に欧州を旅する際には、ぜひモルドバまでおいでください!

かたやま・よしひろ
 1957年、広島市佐伯区生まれ。廿日市高を経て立命館大経済学部卒。80年外務省入省。2年間のルーマニア語研修後はルーマニア、カナダ・トロント、米ニューヨーク、ウクライナ、ケニアの大使館、総領事館で様々な分野や通訳業務などに従事。外務本省では地球環境問題や海賊対策を含めた海洋問題なども担当し、交渉責任者として各種国際会議に出席した。今年2月から現職。妻と子ども4人は都内在住。被爆2世。

(2020年8月23日朝刊セレクト掲載)

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <2> 春の喜びを奪ったコロナ禍

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <3> 外交を支える料理人

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <4> 外交官への夢を追って

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <5> クリスマスは2回ある?

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <6> 稽古場は有楽町

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <7> ささやかなお手伝い

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <8> 響く祝賀の音色

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <9> 初のアフリカ単身赴任

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <10> 笑顔づくりの直接協力

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <11> 日本語教育と文化紹介

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <12> セーシェル外相と古里へ

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <13> マルチ外交の実際

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <14> 国際機関への招待

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <15> ダンス大国で修業

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <16> 外交を支える通訳業務

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <17> 特別な時間

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <18> 邦人保護の現場

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <19> NGOは欠かせぬパートナー

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <20> 外交を通じて平和を!

年別アーカイブ